「創耀技」とは、滋賀県大津市在住の山口善造氏
(1913−)が創案した、科学技術と伝統文化(工芸、書、
絵画)が融合した、まったく新しい芸術技法です。
山口氏は、大正2年に京都で生まれ、小学校のときに
大津市膳所に移り住みました。山口家は代々、西陣で
金箔を取り扱い、その後は金銀糸や漆糸の開発によ
り繊維業界に大きな貢献をした家系でした。山口氏
も学業を終えるや、家業を受け継ぐために金銀糸の
研究を始め、昭和10年には織物業の盛んなフランスに
渡って、パリとリヨンで“ラメ”の研究を積まれました。
帰国後山口氏は金や銀を細く延ばして作る金属糸
の開発に成功し、さらに銀の酸化作用(酸素や他の物
質との科学作用によって銀の表面が錆びて黒ずんで
くる現象のこと)を美術的に応用することを創案され
ました。故意に銀の表面に酸化や硫化などの反応を
起こさせ、それによって現われる不安定な変わりゆ
く色合い(耀変:ようへん)を定着させることによって、
玉虫色に輝く銀糸を作り出したのです。さらに、銀
糸ばかりではなく銀箔でも同じことを試みました。
和紙の表面に銀箔を貼って、その上に書画を措き、
コーティングと酸化反応を重ねて人工的に耀変を起
こし、好みの色と表現を定着させて、赤や青へと移
りゆく微妙な色彩変化に富んだ作品を作り上げました。
こうして「創耀技」は世に生まれ出たのです。
創耀技は、紙だけでなく漆や焼物、金属にまでも
施すことができ、樹軸、巻子、額装、陶磁器など様々
な作品を作ることができます。また山口氏は、御家
流(おいえりゆう)と呼ぶ伝統的な書法を極める一方、
淋派風の絵画をたしなんでおられ、それらが創耀技
の作品に活用されています。伝統的な書画と、耀変
が生み出した「わび、さび」の世界にも通じる深みの
ある色彩との融合は、私たち日本人の美意識を心地
よく括り動かしてくれます。
(山口善造の世界「銀の芸術・創耀技展」パンフレット
より抜粋、上のイメージは「家和萬事成」)